サイトメガロウイルス(以下 CMV)は、ありふれたウィルスであり、日常生活の中で感染する機会は多いです。

ただし、ほとんどの人は、感染しても、発症せずに無症状のままウィルスを保有しているだけです。

 

しかし、妊娠中に妊婦が初めてCMVに感染した場合、胎児にウィルスがうつり、先天性CMV感染症を発症することがあります。

この場合、生まれてきた赤ちゃんに、難聴などの障害が残る可能性があります。

 

今回は、CMV感染症において、感染経路、潜伏期間、症状、検査方法、治療法、予防法などを解説します。

 

サイトメガロウイルスの検査

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まずは、サイトメガロウイルスの検査に関して、以下の項目を解説します。

 

検査方法

サイトメガロウイルスへの感染は、採血によるIgGとIgMという2つの抗体を調べることで分かります。

まず、妊娠初期から16週目までの間に、IgGを調べます。

ここで、陰性が出た場合は、特に注意が必要です。

IgGが陰性ということは、CMVに対する抗体を有していないということであり、妊娠中にCMVに初感染する恐れがあるからです。

 

一方で、妊娠初期の検査で、IgGに陽性反応が出た場合は、過去にCMVに感染したことがあるとわかります。

 

続いて、IgG陽性の人は、IgMを測定します。

ここで、IgMが陰性の場合は、CMVが体内に潜んだ状態となっています。

また、CMVに対する免疫を獲得していることもわかります。

この場合でも、CMVが胎児に感染する可能性はありますが、感染の確率や出生児への障害の発現率は初感染に比べて低いです。

 

IgMが陽性の場合は、CMVの感染時期を特定するために、IgG avidity(アビディティー)を調べます。

というのも、下図の水色線で示したように、CMVは、感染後もIgM抗体が長く残るため、長期にわたって陽性反応が出てしまい、感染時期を特定することが困難です。

※通常のウィルスに感染した場合は、下図の赤線のように、感染時期にのみ、IgMが陽性となるので、IgMが陰性であれば、妊娠するずっと前に感染したと判断できます。

 

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出典:https://medicalnote.jp/contents/160707-002-JJ

 

つまり、妊娠前にCMVに感染していたとしても、妊娠中にIgM陽性となる可能性があります。

そこで、IgG avidity(アビディティー)という指標を調べることで、感染時期が妊娠前なのか、妊娠中なのかを調べるのです。

 

IgG avidityは、体内のIgG抗体と免疫反応を起こさせる抗原との結合力(くっつきやすさ)を示す指標です。

CMVに感染した直後では、体内には抗原と親和性が低い(くっつきにくい)IgG抗体が産生します。

しかし、感染からある程度時間が経過すると、親和性の高い、くっつきやすい抗原が現れます。

そのため、IgG avidityが高い場合は、CMVの感染からある程度の時間が経過していることがわかり、妊娠中の感染ではなく、ずいぶんと昔の感染であることがわかります。

 

ここまでをまとめると、下図のようになります。

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出典:https://medicalnote.jp/contents/160707-002-JJ

上図において、赤枠で示したように、IgG陽性かつIgM陰性の場合は、CMVに対して免疫を有しており、なおかつ感染したのは妊娠する前なので、胎児への感染や出生児に障害が発現する確率は低いです。

また、青枠で示したように、IgG陽性、IgM陽性、IgG avidity高値の場合も、過去にCMVに感染し、免疫を獲得しているため、胎児や出生児に重度の障害が現れるリスクは低いと言えます。

 

では、CMVの免疫有無により、出生児への障害リスクについて解説します。

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母体のCMV感染による出生児への障害発現リスク

まずは、下図を見てください。

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出典:https://medicalnote.jp/contents/160707-001-DK

 

まず、妊婦全体の70%がCMVの抗体を保有しています。

これらの妊婦がCMVに再感染(再活性化)した場合、0.2~2%は胎児も感染します。

そして、出生児の0.5~1%に、CMV感染による症状が現れます。

 

一方で、CMVの抗体を持たない30%の妊婦は、妊娠中に1~2%がCMVに初感染するとされています。

そして、感染した場合は、40%もの確率で胎児も感染を起こします。

なお、感染しても80%の胎児は、出生時には無症状であり、出生時に何らかの症状が見られるのは20%です。

 

ただし、出生時に無症状だったとしても、その10~15%は、生まれた後に難聴や精神遅延などの症状が現れます。

そして、出生時に何らかの症状が見られた子供は、その90%が、生まれた後に難聴、精神遅延、運動障害が現れます。

 

現在、日本では、年間で約3000人の赤ちゃんが母体内でCMVに感染しています。

上図で説明したように、このうちの80%にあたる約2400人は無症状であり、残りの約600人に何らかの症状が現れます。

そして、無症状の約2400人のうち、10~15%にあたる240人~360人には、難聴や精神遅延などの障害が現れます。

 

また、出生時に何らかの症状が見られた約600人のうち、90%にあたる540人には、成長とともに難聴などの障害が現れます。

 

このように具体的な数字で見ると、母体内での胎児のCMV感染は、出生後に後遺症を残すリスクが高いことがわかります。

 

検査費用

CMVに対する抗体を持っているかどうかは、血液検査により分かります。

この抗体検査の費用は、2000~3000円ほどです。

 

検査はどこで受ければよいのか?

CMVの抗体検査は、産婦人科医院や病院の内科で受けられます。

 

検査結果の数値の見方

CMVの抗体検査を受けると、以下のような結果表が出ます。

 

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出典:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11130203486

 

上図では、IgGの数値が2.0であり、判定基準値2.0以上なので、陽性となっています。

そして、IgMの数値は0.41であり、判定基準値0.8未満なので、陰性と判定されています。

 

IgG陽性、IgM陰性なので、過去にCMVに感染しており、CMVの抗体を有していることがわかります。

 

さて、ここまでの説明で、CMVの検査方法や検査結果の見方については、ご理解いただけたはずです。

以下では、CMV感染について、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

CMVの感染経路

CMVは、人同士の直接および間接接触によって感染します。

子宮頸管粘液、膣分泌液、母乳などが主な感染源であり、唾液の交換、母乳、精液、輸血を通じて感染します。

つまり、ウィルスの侵入門戸は、口や生殖器となります。

大多数の日本人は、母子間で感染しますが、無症状のままウィルスを保有しているケースが多いです。

 

また、CMVを発症しても、発熱やリンパ節の腫れなど軽度な症状で治まることがほとんどです。

ただし、妊娠中に胎内で感染した場合は、先天性CMV感染症として、難聴や知能障害などの後遺症が残ることがあります。

 

なお、妊娠中に母体がCMVに初感染するのは、上の子供の唾液や尿によることが多いです。

妊娠中にすでに上に小さい子供がいる場合、おむつ交換やスプーン共有などにより、CMVに感染している子供の尿や唾液に触れる機会が多々あります。

また、保育士など小さな子供との接触機会が多い職業の妊婦も注意が必要です。

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CMVの潜伏期間

CMV感染症の潜伏期間は、5~6週間とされています。

 

CMVの症状

CMVに対する免疫を持っていれば、感染しても症状は現れないことが多いです。

まれに、発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどが見られることはありますが、自然治癒します。

ただし、妊娠中の女性がCMVに初めて感染した場合は、赤ちゃんに後遺症が残ることがあります。

 

妊娠中のCMV感染により赤ちゃんに現れる症状

妊娠中に母体がCMVに感染したり、体内に潜んでいたウィルスが何らかの理由で再活性化した場合、ウィルスは胎盤を通じて胎児へと移動し、出生時に先天性CMV感染症を発症することがあります。

このとき、赤ちゃんには以下のような症状が現れます。

低出生体重、肝機能異常、小頭症、水頭症、脳内石灰化、紫斑、血小板減少、貧血、黄疸(皮膚が黄色くなること)、網膜症、白内障、肺炎、けいれんなど

 

ここで、肝機能以上や水頭症など重症の場合は、新生児が亡くなることもあります。

そして、成長するにつれて、難聴、運動障害、精神遅延などが現れることがあります。

 

CMV感染の予防法

CMV感染が問題になるのは、抗体を持たない妊娠中の女性が初感染し、それが胎児にうつることです。

上記で説明したように、妊婦へのCMV初感染は、小児の尿や唾液への接触によるところが多いです。

そのため、CMV感染を予防するには、以下の点に注意する必要があります。

  • おむつ交換、子供へのハナやヨダレ拭きの後は、石鹸で手洗いをする
  • 子供と食べ物、飲み物、食器などを共有しない
  • 歯ブラシを共有しない
  • 子供の口元にキスしない
    etc

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CMVの治療

先に説明したように、CMVに感染しても、たいていの人は無症状のままウィルスを保有しているだけです。

また、仮に発症したとしても、発熱やリンパ節の腫れなど、軽い症状で自然治癒することが多いです。

ただし、免疫力が低下している場合は、体内に潜伏していたウィルスが再活性化し、網膜炎、肺炎、髄膜炎、大腸炎、血小板減少、白血球減少などの重篤な症状を引き起こすことがあります。

 

この場合は、以下の抗ウィルス薬を使用します。

  • ガンシクロビル
  • バルガンシクロビル
  • ホスカルネット

このうち、バルガンシクロビルの効果や副作用については、以下の記事で解説しています。

バリキサ(バルガンシクロビル)の効果と副作用

 

ただし、先天性CMV感染症においては、実用化されているワクチンは今のところありません。

先天性CMV感染症の診断や治療については、以下の病院の専門医に相談してください。

 

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出典:http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/pdf/pnf3.pdf#search=%27%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A1%E3%82%AC%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9+%E6%8A%97%E4%BD%93+%E9%99%BD%E6%80%A7%27

CMV感染者の声

SNSを見ていると、子供が先天性CMV感染症と診断されたことで、保育園の入園を拒否された例もあります。

 

 

最終的には、保護者からの理解を得て、無事子供を入園させることができたようです。

ただ、先天性CMV感染症は、一般的にあまり知られていない病気であり、正しい知識を持っている人が少なく、差別や偏見などがあるのも現状です。

そのため、まずは正しい知識を身につけ、妊娠中に初感染しないよう注意してください。

 

まとめ

本記事では、CMVの基礎知識、検査方法、治療法、予防法などについて解説しました。

多くの人は、すでにCMVに感染しており免疫を有しているはずです。

しかし、CMVの抗体を持っていない女性は、妊娠中に初感染することで、赤ちゃんに障害が残る可能性があるので、特に注意が必要です。

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