寒い季節になると、風邪やインフルエンザの予防のために、マスクを着用する人は多いです。

しかし、ウィルス感染症予防に対するマスクの使用については、こんな意見もあります。

 

「インフルエンザの予防にマスクは効果ない。」

「マスクの網目より、ウィルスの方が圧倒的に小さいんだから、つけてても意味ないよ。」

 

確かに、市販されているマスクでは、空気中を漂うインフルエンザウィルスを捕集するのが難しいのは事実です。

ただし、マスクはインフルエンザの予防に大きな効果を発揮します。

残念なことに、マスクの機能や効果などを正しく理解している人はごくわずかであり、ネットの間違った情報を鵜呑みにしている人は多いのです。

 

そこで、今回は、マスクに関する正しい知識、およびインフルエンザ感染症に対するマスクの予防効果について解説します。

また、インフルエンザの予防におすすめのマスクも紹介します。

 

マスクで飛沫、接触感染を予防

さて、マスクの効果や働きについて説明する前に、まずはマスクで予防できるインフルエンザウィルスの感染経路について理解しておきましょう。

インフルエンザ感染症は、インフルエンザウィルスが口腔や鼻腔の粘膜に付着し、そこから細胞に侵入して増殖することで発症します。

そして、ウィルスへの感染は、以下の3つの経路にて起こります。

  • 飛沫感染
  • 接触感染
  • 空気感染

 

では、各感染経路について順番に説明します。

 

飛沫感染

飛沫感染は、患者の咳やくしゃみで飛び散った飛沫(しぶき)による感染です。

インフルエンザ感染者の咳やくしゃみにはウィルスが含まれており、1回の咳に約60万個ものウィルスが存在しているとされています。

そのため、患者の飛沫を口や鼻から吸い込むことで、感染してしまうことがあります。

 

接触感染

接触感染は、ウィルスが付着した手で、口や鼻などの粘膜を触ることによる感染です。

患者が触れるものには、ウィルスが付着する可能性があります。

ドアノブ、部屋のスイッチ、手すり、電車のつり革、エレベーターの階ボタンなど挙げればキリがありません。

ウィルスが付着した箇所を触り、その手で口や鼻などの粘膜に触れることで、ウィルスに感染することがあります。

 

なお、マスクを着用している間は、口や鼻を手で直接触ることがないので、接触感染を防ぐことができます。

 

空気感染

空気感染は、空気中を漂うウィルスを吸い込むことによる感染です。

インフルエンザ感染者のくしゃみや咳により排出されたウィルスは、2~3時間生き続けると言われています。

ただし、この空気感染は、飛沫感染や接触感染に比べると、伝染力は弱く、可能性があるという程度と考えられています。

 

これらの3つの感染経路のうち、マスクでは飛沫感染と接触感染を防ぐことができます。

 

続いて、マスクの働きについて簡単に解説しておきます。

 

マスクの働き

マスクは、ウィルスが口や鼻に侵入するのを防ぐだけでなく、気道粘膜の湿度を保つ効果があります。

後述しますが、空気の乾燥や口呼吸などにより気道が乾燥すると、気道粘膜の免疫が低下し、インフルエンザウィルスに感染した場合に症状を発症しやすくなります。

そこで、マスク着用により気道を保湿することで、ウィルスから粘膜を防御できます。

 

次に、マスクの種類と機能について説明します。

 

マスクの種類と機能

マスクは、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

  1. 織布マスク(ガーゼマスク)
  2. 不織布マスク
  3. 医療用マスク(N95マスク)

では、順番に説明します。

 

織布マスク(ガーゼマスク)

まず、織布マスクは、何度も洗って使えて、顔に密着しやすく保湿効果も高いので、のどの乾燥防止には適しています。

インフルエンザウィルスは、湿気に弱く、湿度50~60%に保つことで、ウィルスの活動を弱めることができ、ウィルスの生存率が大幅に下がるとされています。

そのため、インフルエンザ予防にある程度の効果は期待できるでしょう。

しかし、網目が粗いので、ウィルスの侵入を防ぐことは難しいです。

 

不織布マスク

続いて、不織布マスクは、織布マスクよりも目が細かく、フィルター効果が高いので、飛沫感染の予防には適しています。

しかし、インフルエンザウィルスよりも網目は大きいので、空気感染を防ぐことは難しいです。

例えば、「ウィルス飛沫、花粉を99%カットするフィルター採用」などと書かれたマスクでは、約1.7μmの粒子の除去を想定しています。

 

インフルエンザウィルスの大きさは、約0.1μm以下であり、通常の不織布マスクでは、ウィルスを捕集することはできません。

ただし、くしゃみや咳により排出される飛沫は、3~5μmほどの大きさなので、マスクでブロックすることが可能です。

 

%e7%b2%92%e5%ad%90%e3%81%ae%e5%a4%a7%e3%81%8d%e3%81%95%e6%af%94%e8%bc%83

 

出典:https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat04.pdf#search=%27VFE%E8%A9%A6%E9%A8%93%27

 

不織布マスクは、保湿性では織布マスクに劣りますが、使い捨てなので衛生的であり、お値段もリーズナブルなものが多いです。

 

医療用マスク(N95マスク)

最後に、医療用マスク(N95)は、不織布マスクよりもさらに網目が細かく、フィルター機能に優れています。

このマスクは、0.3μmの粒子を95%以上捕集することが可能です。

しかし、インフルエンザウィルスの大きさは、約0.1μm以下なので、N95マスクでも、完全にブロックすることは難しいのです。

 

N95マスクは、医療従事者用であり、高機能なので、使い捨てタイプにも関わらず値段が高いというデメリットがあります。

また、網目が非常に小さいので、しばらく装着していると息苦しく感じます。

そのため、長時間の装着には不向きであり、インフルエンザ予防のための日常的な使用には適していません。

 

以上から、インフルエンザの予防には、リーズナブルで、衛生的で、なおかつフィルター効果の高い不織布マスクが最適だと考えられます。

 

さて、インフルエンザに有効なマスクの種類が分かったところで、次はマスクを選ぶ際のポイントについて解説します。

sponsored link

マスクの選びのポイント

マスクを選ぶ際には、顔にぴったりとフィットしていることが重要です。

顔にフィットしていないと、顔とマスクの隙間からウィルスが入り放題であり、マスクをつける意味がなくなってしまいます。

%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%af%e3%81%a8%e9%a1%94%e3%81%ae%e9%9a%99%e9%96%93

出典:https://www.kawamoto-sangyo.co.jp/common/img/under/products/surgicalmask_er_s_02.jpg

ここで、自分に合ったマスクのサイズは、以下の方法で知ることができます。

 

まずは、親指と人差し指を立てて、Lの形を作ります。

l%e3%81%ae%e5%bd%a2

出典:http://www.idm-ne.com/aitem/unicharm_mask_k/unicharm_mask_k_04.gif

 

親指の先端を耳のつけ根(マスクのゴムがかかる部分)に、人差し指の先端を鼻のつけ根から1cm下に当てます。

l%e3%81%ae%e5%bd%a2%e3%82%92%e3%81%97%e3%81%9f%e6%8c%87%e3%82%92%e3%81%82%e3%81%a6%e3%82%8b%e4%bd%8d%e7%bd%ae

出典:http://www.idm-ne.com/aitem/unicharm_mask_k/unicharm_mask_k_04.gif

 

 

手をそのままの状態で顔から離し、親指と人差し指の間隔を定規などで測定してください。

%e9%96%93%e9%9a%94%e3%82%92%e6%b8%ac%e5%ae%9a

出典:http://www.idm-ne.com/aitem/unicharm_mask_k/unicharm_mask_k_04.gif

 

この長さによって、マスクのサイズを選びます。

  • 子供用:9~11cm
  • 小さめサイズ:11~12.5cm
  • 普通サイズ:12.5~14.5cm
  • 大きめサイズ:14.5cm以上

 

市販品にも様々なサイズのものがあるので、自分に合ったマスクを選び、鼻や口の周りにぴったりとフィットさせて、隙間を作らないように装着しましょう。

 

さて、インフルエンザの予防には、不織布マスクが向いていると説明しましたが、マスクをぬらすことで、さらに予防効果を高めることができます。

 

ぬれマスクでインフルエンザ予防

ぬれマスクとは、その名の通り、水分を含んだマスクのことです。

ぬらしたマスクをかけることで、高濃度の水蒸気を鼻から吸い込み、のどの入り口を潤します。

まずは、ぬれマスクの効果について見ていきましょう。

 

ぬれマスクの効果

ぬれマスクは、以下のような効果があります。

  • 気道の湿度を保つ
  • 鼻呼吸を促進させる
  • リンパ球の働きを抑制させる

 

ぬれマスクは、気道の湿度を確保するだけでなく、寝ている間にかけることで、鼻呼吸を促進させる効果があります。

そもそも、インフルエンザの感染は、上気道の乾燥が引き金となって起こるので、のどの乾燥を抑えることが何よりの予防法となります。

また、鼻から酸素を吸い込むと、鼻とその奥にある咽頭の粘膜の毛細血管に直接酸素が働きます。

鼻の奥のBスポットと呼ばれる場所には、インフルエンザにかかったときなどに重要な役割を果たす咽頭扁桃があります。

 

%e5%92%bd%e9%a0%ad%e6%89%81%e6%a1%83

 

出典:http://nishihara-kyoto.com/bspot/images/b_spot.gif

 

鼻呼吸で、咽頭扁桃に酸素が十分に行き渡ると、毛細血管の交感神経が刺激され、リンパ球の過剰な働きを抑え込んでくれます。

その結果、上気道組織の炎症が抑えられます。

つまりは、インフルエンザの症状を発症しにくくなるというわけです。

 

就寝時のぬれマスクが効果的

まず、インフルエンザの症状に最初に気づくのは、起床時間帯が多いと言われています。

ある歯科医院を訪れた患者を対象に、インフルエンザの症状にいつ気づいたかについてアンケートをとったところ、以下のような結果となりました。

  • 起床時:50.4%
  • 昼間:14.9%
  • 夕方から夜:31.3%
  • 夜中:3.5%

 

つまり、インフルエンザは、起床時間帯に気づく人が、他の時間帯に比べて最も多いのです。

 

これは、睡眠中の嚥下(つばを飲み込むこと)の停止、上気道の活動停滞などにより、インフルエンザウィルスが増殖したことが原因と考えられています。

日中は、上気道が活動しているので、インフルエンザウィルスがのどや鼻の奥で増殖しても、ほとんどはつばと一緒に飲み込まれてしまいます

 

しかし、夜になり、人が寝静まると、上気道の活動が停滞するため、ウィルスが一斉に増殖を始めるのです。

そのため、睡眠中の予防策が必要と言えます。

 

そもそも、インフルエンザは、副交感神経が働く夜中に、ウィルスへの過剰防衛が行われ、リンパ球が働きすぎたことが原因で発症します

インフルエンザウィルスに感染すると、最初は、副交感神経の働きが高まり、リンパ球が反応して、ウィルスを排除しようとします。

同時に、ウィルスに対する抗体の産生を始めます。

さらに、リンパ球がサイトカインを放出し、中枢神経を介して、炎症物質、発熱物質が分泌されます。

 

その結果、のどの痛み、発熱、頭痛、鼻水、くしゃみなどの症状が現れます。

そして、これらの症状は、朝目覚めて、つばを飲み込んだときに、自覚されることが多いのです。

 

ただし、たとえインフルエンザウィルスにかかったとしても、寝ている間の適切な対応があれば、軽い症状でやり過ごすことができます。

それで朝起きてのどに異変がなければ、昼間はそれ以上、症状がひどくなることはありません。

以上から、寝ているときに、ぬれマスクを着用することで、上気道を加湿・保護し、同時に鼻呼吸を促進して、交感神経を刺激することで、リンパ球の過剰防衛を抑え、のどの炎症などの症状発症を防ぐことができます

 

ぬれマスクの作り方

ぬれマスクは、マスクを濡らすことで簡単に作れます。

まず、マスクの上方1/3のところを外側に折り返します。

 

%e3%81%ac%e3%82%8c%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%af%e3%81%ae%e4%bd%9c%e3%82%8a%e6%96%b9

出典:http://39.benesse.ne.jp/blog/0741/img/FJ310169.JPG

 

そして、折り返した箇所(赤枠部)を水でぬらせば完成です。

マスクをぬらす水分の量は、自分の好みで決めてください。

多すぎたら、指先で余分な水分を絞ればOKです。

 

%e3%81%ac%e3%82%8c%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%af%e3%81%ae%e3%81%a4%e3%81%91%e6%96%b9

 

出典:http://www.d-teduka.co.jp/Healthy%20Column/healthy1.htm

 

あとは、上の画像のように、鼻を覆わないように装着してください。

このつけ方であれば、鼻の下に当たるガーゼは、折りたたんだことにより、倍の厚さになるので、その分だけ水蒸気を多く鼻に吸い込むことができます。

起きている間は、マスクを折らずに、鼻を覆ってしまっても、息苦しくはありません。

 

 

ちなみに、ぬれマスクを毎回作るのが面倒な方は、のどぬーるぬれマスクという市販品もあります。

%e3%81%ae%e3%81%a9%e3%81%ac%e3%83%bc%e3%82%8b%e3%81%ac%e3%82%8c%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%af

 

ただし、この商品は、3セットで432円(税込み)であり、お安くはありません。

 

予防嚥下法とぬれマスクのダブル効果でインフルエンザ撃退

さて、インフルエンザ予防にぬれマスクが効果的だと説明しましたが、もう一つインフルエンザを撃退するのに有効な方法があります。

それが予防嚥下法です。

予防嚥下法は、嚥下をあまり行わない時間帯に、意識的に嚥下をすることです。

 

先に説明したように、インフルエンザ感染症の発症原因の1つとして、夜間の嚥下停止が挙げられます。

日中は、上気道が活動しているので、インフルエンザウィルスがのどや鼻の奥で増殖しても、ほとんどはつばと一緒に飲み込まれてしまいます。

そのため、インフルエンザを発症しにくいのです。

 

しかし、ヒトは睡眠中に嚥下をしません。

そもそも、嚥下は随意運動(意識的に行う運動)であり、目覚めていて意識があるときにする運動です。

睡眠中に嚥下が行われないことで、喉に付着したウィルスは、つばで洗い流されないため、増殖しやすいのです。

 

そこで、枕元にペットボトルや魔法瓶などを置いておき、目が覚めたときに、少し水分を摂り、ゆっくりと嚥下して飲み込みます。

嚥下により、上気道が潤され、ウィルスの排除に役立ちます。

また、嚥下は、一時的に交感神経を高めるので、夜中に副交感神経が優位なときでも、リンパ球の過剰な働きを鎮めてくれます。

なお、夜中に目が覚めない場合は、起きたらすぐに温かいお茶などの飲み物を摂り、嚥下することで、上気道を洗い流し、気道粘膜の免疫力をアップさせることができます。

もちろん、朝食を摂ることが、効果的なのは言うまでもありません。

 

また、昼間起きているときでも、少量の水分をこまめに飲んで、嚥下を行うことで、ウィルスに感染しやすい部分を洗い流してくれるので、インフルエンザの予防効果があります

この予防嚥下法は、ぬれマスクと併せて行うことで、インフルエンザ撃退の効果をさらに高めてくれます。

 

さて、ここまでの説明で、ぬれマスクの効果と予防嚥下法については、ご理解いただけたかと思います。

次は、マスクを使用する際の注意点について解説します。

sponsored link

使用における注意点

マスクを使用する際には、以下の点に注意してください。

  • 使い捨てなので適度に交換する
  • 交換のときにマスク表面に触れない
  • 使用済みマスクは密封して廃棄
  • 交換後、廃棄後は消毒または手を洗う

まず、不織布マスクは、使い捨てなのっで、1日1~2枚程度を目安に交換しましょう。

特に、インフルエンザ感染者と接した場合は、くしゃみや咳などにより、マスクの表面に飛沫が付着している可能性があるので、すぐに交換してください。

 

次に、マスクを替える際には、ゴムバンドの部分のみを持ってはずし、ウィルスが付着している可能性があるマスク表面には触れないようにします。

そして、使い終わったマスクは、ビニール袋などに入れて、廃棄してください。

 

最後に、マスクを交換したり、廃棄したときは、ウィルスが手に付着している可能性があるので、アルコール手指消毒剤で消毒したり、石鹸で手を洗いましょう。

 

次に、マスクの正しいつけ方について載せておきます。

「今更?」と思うかもしれませんが、案外マスクのつけ方を間違えている人は多いのです。

この機会に、正しいつけ方を理解しておきましょう。

 

マスクのつけ方

マスクのつけ方については、以下の動画で説明しています。

 

 

以下の図のように、マスクをつけるときは、ヒダが下向きの方を外側にしてください。

%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%af%e3%81%ae%e3%81%a4%e3%81%91%e6%96%b9

出典:http://hanadumari.info/img/masukua.png

 

最後に、マスク着用により、インフルエンザ感染症の発症を抑制できた事例について紹介しておきます。

 

マスク着用による発症抑制の事例

大学と企業が2007年2月から3月にかけて、共同で行った研究によると、マスク着用でインフルエンザ感染症のは商を1/5に減らす効果があると実証されています。

東京都荒川区の小学生254人を対象として、マスク装着組と非装着組に分けて、インフルエンザの発症率を調査しました。

 

その結果、マスクをつけずに過ごした103人のうち、10名がインフルエンザにかかったため、非装着組の発症率は9.7%でした。

一方で、マスクをつけた151人のうち、インフルエンザにかかったのは3人であり、装着組の発症率は2%でした。

以上から、マスクを着用することで、発症を1/5に低減させる効果があるとわかったのです。

 

まとめ

マスクには、主に織布マスク、不織布マスク、医療用マスクの3種類があります。

不織布マスクは、インフルエンザ感染症における、飛沫感染と接触感染の予防に効果を発揮します。

また、使い捨てなので衛生的であり、お値段もリーズナブルなので、インフルエンザ予防のために、日常的に使用するマスクとしては最適と言えます。

 

そして、不織布マスクの中でも、ぬれマスクは、気道保湿、鼻呼吸促進、リンパ球の働き抑制などの効果から、インフルエンザに対して高い予防効果が期待できます。

以上から、インフルエンザ予防のマスクには、ぬれマスクがおすすめです。

sponsored link