冬になるとノロウィルスが猛威をふるい、多くの人が下痢や嘔吐に苦しみますが、周りの人が感染しているのに、ケロッとしていて、全く発症しない人もいます。

では、ノロウィルスに感染しやすい人としにくい人の違いは何なのでしょうか。

そのときの体調や免疫の有無なども考えられますが、ネットでは「血液型がB型とAB型の人はノロウィルスに感染しない」とまことしやかに囁かれています。

 

そこで、この噂が真実なのか、信頼できるソースをもとに調査したので、結果をまとめておきます。

B型とAB型がノロウィルスに感染しにくいのは本当なのか?

血液型

結論から言うと、ノロウィルスには、B型とAB型の人が感染しにくい種類(遺伝子型)があるのは事実です。

ただし、B型・AB型の人がすべての種類のノロウィルスに感染しにくいのかというと、そうではありません。

B型・AB型の人が感染しやすいタイプのノロウィルスも存在します。

 

では、自分の血液型が感染しやすい種類のノロウィルスを知るにはどうすればよいのでしょうか。

そのためには、現在流行しているノロウィルスの種類を把握するとともに、ウィルスと血液型との関係についても正しく理解する必要があります。

そこで、まずは、ノロウィルスの種類について解説します。

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ノロウィルスには30種類以上のタイプが存在する

ノロウィルス 多くの種類

まず、ノロウィルスはGenogroup I(GI)とGenogroup II (GII)の2つの遺伝子群(Genogroup)に大別されます。

そして、GIはGI/1~GI/15までの15種類、GIIはGII/1~GII/18までの18種類の遺伝子型(genotype)に分類されます。

つまり、ノロウィルスと一口に言っても、以下のように33種類以上のタイプ(遺伝子型)が存在しています。

 

【ノロウィルスの遺伝子型系統図】

ノロウィルス遺伝子型系統図

 

<出典>

国立感染症研究所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/57/2/57_2_181/_pdf

 

ここで、B型・AB型の人が感染しにくいとされているのは、上の図の赤枠で囲んだNorwalk/68(GI/1)と呼ばれるタイプのノロウィルスです。

日本では2006年にノロウィルスが大流行して世間を騒がせましたが、このとき多くの人が感染したウィルスこそNorwalk/68(GI/1)なのです。

では、なぜ血液型がB型・AB型の人は、Norwalk/68(GI/1)のノロウィルスに感染しにくいのでしょうか?

 

この理由をするためには、まずはヒトがノロウィルスに感染する際のメカニズムを把握しておく必要があります。

ノロウィルスに感染するメカニズム

小腸

 

そもそも、ノロウィルスは体内に入ると、小腸の上皮細胞で感染を起こします。

上皮細胞の表面には血液型抗原(正しくは組織血液型抗原)と呼ばれる受容体が存在しており、この受容体にノロウィルスが結合することで感染が始まると考えられています。

受容体というのは、物質と結合することで細胞機能に変化を生じさせるタンパク質のことです。

簡単に言うと、ウィルスをキャッチして、細胞に取り込む機能を持った物質です。

 

つまり、小腸の細胞表面には、血液型抗原というウィルスをキャッチできる物質が存在しており、このキャッチャーとノロウィルスが結合することで、細胞を侵食していくというイメージです。

 

小腸の上皮細胞でノロウィルスが感染するイメージ図 

<参考>

北海道大学:http://www.eng.hokudai.ac.jp/engineering/2013-10/feature1310-02.html

 

 

血液型抗原については後で詳しく説明しますが、血液型抗原は血液型によって形が異なり、どんな種類のノロウィルスでもキャッチできるというわけではありません。

つまり、体内に侵入したノロウィルスの遺伝子型とぴったり結合できる血液型抗原(受容体)がある人は、ウィルスに感染しやすく、ない人は感染しにくいのです。

腸に侵入したノロウィルスとくっつくことのできるタイプの血液型抗原がなければ、ウィルスは腸に吸着されることなく、そのまま通過してしまうので、感染しません。

 

ノロウィルス 組織血液型抗原がないので感染できないイメージ図

<参考>

北海道大学:http://www.eng.hokudai.ac.jp/engineering/2013-10/feature1310-02.html

 

ここまでの説明から、私たちがノロウィルスに感染するためには、小腸の細胞表面にウィルスにぴったりと合う血液型抗原(受容体)が必要だと分かりましたね。

実は、この血液型抗原は血液型によっていくつかのタイプがあり、そのために人によって感染しやすい種類のノロウィルスと感染しにくい種類のノロウィルスが存在するのです。

 

ノロウィルスと血液型の関係

ウィルス

まず、血液型抗原は、唾液や小腸の上皮細胞に分泌されています。

ここで、抗原というのは、体に異物が侵入したとき、人体を守る免疫反応を引き起こす性質を持った物質のことです。

そして、近年の研究から、どうやら一部の種類のノロウィルスは、この血液型抗原に吸着(結合)することが判明しました。

 

まずは、以下の表をご覧ください。

これは、各種ノロウィルスと結合する血液型抗原をまとめたものです。

 

各種ノロウィルスと結合する血液型抗原まとめ

<出典>

国立感染症研究所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/57/2/57_2_181/_pdf

 

上の表からも分かるように、先に紹介したNorwalk/68(GI/1)のノロウィルスは、A型抗原またはH型抗原と結合するため、A型抗原を分泌するA型の人やH型抗原を分泌するO型の人には感染しやすいです。

一方で、Norwalk/68(GI/1)はB型抗原とは結合しないので、B型抗原を分泌するB型やAB型の人には感染しにくいのです。

ただし、ここで1つ注意点があります。

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GII/4は血液型に関係なく感染する

さて、上の表をもう一度ご覧ください。

 

各種ノロウィルスと結合する血液型抗原まとめ2

<出典>

国立感染症研究所:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/57/2/57_2_181/_pdf

 

上の表の赤枠で示したように、近年日本で流行しているGII/4という遺伝子型のノロウィルスは、A型抗原、B型抗原、H型抗原すべてと結合するため、血液型に関係なく、小腸の粘膜に血液型抗原を分泌している人なら、誰でも感染する可能性があります。

さらに、2015年から感染者数が急増しているGII/17というノロウィルスは、GII/4の進化型とされていいます。

GII/17の血液型抗原による感染のしやすさに関しては、まだ研究データがありませんが、GII/4の進化版だということを考えると、こちらも血液型とは無関係に感染の可能性があると予想されます。

 

以上から、ネットではB型・AB型の人はノロウィルスに感染しにくいと噂されていますが、それはNorwalk/68(GI/1)を始めとする一部の種類のノロウィルスに限ったことです。

現在日本で流行しているGII/4やGII/17の遺伝子型のノロウィルスについては、血液型の種類に関係なく、感染の危険性があるので、お間違えなく。

 

さて、ここまでの説明を聞いたあなたは、こんな疑問を感じませんか?

「ノロウィルスが人に感染する際には、血液型抗原という受容体(ウィルスキャッチャー)が必要なんですよね。」

「だったら、そもそも血液型抗原を分泌していない人は、ウィルスに感染しないのでは?」

 

そこで、次にはこの疑問について回答していきます。

血液型抗原を分泌しない人は感染しないのか?

 

結論から言うと、血液型抗原を分泌しない人(非分泌者)は、ノロウィルスを小腸の細胞内に取り込むことができないので、ノロウィルスに感染しにくいです。

先に説明したように、ノロウィルスは小腸の粘膜にある血液型抗原を受容体(ウィルスをキャッチする物質)として利用し、血液型抗原とくっつくことで、細胞内に侵入し、増殖していきます。

ここで、血液型抗原が小腸上皮細胞に存在しなければ、ウィルスは細胞内に入り込むことができず、そのまま小腸を通過して、排出されてしまい、人には感染しません。

 

日本人の20~25%は、血液型抗原を分泌しない非分泌者であり、彼らはノロウィルスに感染しにくいのです。

そのため、周りの人がノロウィルスに感染して苦しんでいるのに、全く感染しない人は血液型抗原の非分泌者である可能性があります。

以上から、遺伝的にノロウィルスに感染しやすい人とそうでない人がいることも分かります。

 

では、最後にノロウィルスの免疫についてお話しておきます。

ノロウィルスに感染すると、その遺伝子型のウィルスに対して免疫ができるため、次に同じウィルスに感染しても、発症しないか、もしくは発症したとしても早期に治癒するとされています。

ただし、ここには1つ落とし穴があるので、注意が必要です。

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ノロウィルスの免疫の持続期間にご用心

ウィルス 人間の体 免疫

さて、過去に同じタイプのノロウィルスに感染した場合、その遺伝子型のウィルスに対して、免疫を獲得しているため、その後同じウィルスに感染しても、発症しないか、軽度で済むと言われています。

では、この免疫機能は、いつまで持続するのでしょうか?

 

先に結論から言うと、免疫が続くのはわずか半年ほどです。

 

ここまで何度も説明したように、ノロウィルスは小腸の上皮細胞で感染し、そこで増殖します。

これは、局所感染と呼ばれており、免疫の持続期間が短いことが特徴です。

ノロウィルスに感染すると、小腸にIgA抗体が出現しますが、この局所抗体は数ヶ月から一年程度しか効力が続きません。

そして、半年から二年が経過すると、再感染の可能性がでてきます。

 

そのため、ノロウィルスに感染しても、約半年後には、免疫を失ってしまうので、再感染しないよう予防や対策を行う必要があります。

なお、ノロウィルスの免疫持続期間については、4年~8年とする研究報告もあり、報告書によってばらつきがあります。

もちろん、向こう4年もノロウィルスに感染しないのなら、ありがたいことですが、楽観的にとらえて、対策を怠ったがために、地獄の苦しみを味わうくらいなら、短めに見積もっておいた方がよいでしょう。

 

さらに、ノロウィルスには30種類以上のタイプがあるので、異なったタイプのノロウィルスに1シーズンで2回以上感染する可能性も考えられます。

例えば、1シーズンのうちに、主流となっているGII/4型、2015年から感染者数が増えているGII/17に、それぞれ感染することも考えられます。

また、GII/4型については、遺伝子変異体がいくつか出現しており、2009年にはGII/4 New Orleans、2012年にはGII/4 Sydneyのように変異体が現れています。

 

ここで、GII/4 New OrleansとGII/4 Sydneyは、タイプが異なるので、GII/4 New Orleansの免疫を獲得していたとしても、GII/4 Sydneyに感染する恐れがあります。

以上から、ノロウィルスは、免疫の持続期間が短く、なおかつ様々なタイプがあり、変異を起こしやすいので、毎年別のノロウィルスに感染する危険があります。

結局のところは、手洗い、うがい、マスク着用など基本的なウィルス感染対策をきちんと実行していくしかないようですね。

まとめ

ノロウィルスには、30種類以上の遺伝子型(タイプ)が存在し、中には血液型によって感染率が変わる種類のウィルスもあります。

これは、ノロウィルスが特定の血液型抗原(受容体)と結合することで、小腸の細胞内に取り込まれることが原因です。

例えば、Norwalk/68(GI/1)と呼ばれる種類のウィルスは、H型抗原およびA型抗原とくっつきやすいので、O型とA型の人が感染しやすいのです。

反対に、B型抗原とは結合しないので、B型・AB型の人は感染しにくいと言えます。

 

ただし、近年流行しているGII/4やGII/17のノロウィルスは、感染力が強く、いずれの血液型抗原ともくっつきやすいので、血液型の種類に関係なく、予防や対策が必要となります。

また、免疫についても、ノロウィルスの免疫は半年ほどしか効果を発揮しないので、次のシーズンになれば、また同じウィルスに感染する危険はあります。

そもそも、ノロウィルスには30種類以上のタイプがあり、変異しやすい特性も備えているので、一度かかったからといって、次も感染しないという保障はありません。

 

ノロウィルスが流行する11月からは、手洗い、うがいを励行しましょう。

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