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現代社会では、世界を相手にするビジネスやワールドワイドな企業が増えたこと、24時間営業の店の出現、高齢化による介護関連の仕事増加などにより、夜勤者やシフトワーカーが増えています。

「夜勤の仕事はつらい」、「夜勤は健康によくない」などと言われますが、健康を害するどころか、夜勤をすると寿命が10年以上縮まるという報告もあるのです。

そこで、今回は夜勤が寿命を縮める理由や、その対処法について説明します。

 

夜勤で寿命が縮む理由

先に結論から言うと、夜勤が寿命を縮めるのは、不規則・不自然なリズムの生活を繰り返すことで、体内時計が狂い、体のリズムが壊れ、それが原因で病気になってしまうからです。

まずは、夜勤と寿命の関係を説明するうえで重要となる体内時計について理解しましょう。

 

体内時計とは?

人間の体の様々な働きは、約24時間を1つの周期としたリズムで変化しています。

例えば、体温、血圧、脈拍は夜になると低くなり、朝から昼にかけて高くなります。

ホルモンでは、昼間に分泌が増えるものと、夜間に分泌が増えるものとがあり、それがひっくり返ることはありません。

このような私たちの体の働きに見られる規則性のこと生体リズムといいます。

 

そして、生体リズムをつくりだし、体の様々な働きをコントロールするために、私たちの体内には時計のように時を刻む仕組み※が備わっています。

※近年の分子生物学の進歩により、時計遺伝子と呼ばれる、時を刻む遺伝子の存在も明らかとなっています。

この仕組が体内時計(生体時計)と呼ばれています。

 

では、次に体内時計の周期について解説します。

 

生体リズムの周期

現在、ヒトのように昼間に活動する昼行性生物の生体リズムは、約25時間であることが分かっています。

これは、地球の自転周期・約24時間に対して、1時間ほどズレていることになります。

このズレの理由については、まだ解明されていませんが、以下のように考えられています。

 

地球の自転周期は、現在約24時間ですが、この周期は長い時間をかけて、わずかずつ遅くなっています。

今から10億年前には1日の長さは約20時間であり、5億年前のカンブリア紀には約21時間でした。

そして、霊長類が誕生した約3500万年前には、1日の長さは23.5時間ほどでした。

 

現在地球上にいる生物はいずれも、体内時計の仕組みがほとんど同じです。

そのため、少なくとも生物が爆発的に多様化したカンブリア紀よりも前に、すでに生物は体内時計を持っていたと考えられます。

すると、地球上の生命は、長い歳月を経た進化の過程で、地球の時点の速さが変わるということを遺伝子レベルで体験しているということになります。

よって、生物は、遅くなる自転周期に適応し、生体リズムを保持するための機構として、約1時間の余裕(遊び)を持たせたのだと考えられています。

 

続いて、生体リズムの調整方法について解説します。

 

生体リズムの調整方法

地球の自然な環境下では、日が昇って明るくなり、日が沈めば暗くなり、太陽の明るさが必ず、24時間のリズムを繰り返しています。

そのため、光に反応して、生体リズムが調節される仕組みになっているのです。

このような約24時間周期のリズムをサーカディアンリズムといいます。

 

地球上のすべての生命は、このサーカディアンリズムを基本として生きています。

そのため、それが狂ったときには、元に戻すための糊代が用意されており、体内時計に前後1時間のズレを設定しているわけです。

 

人間の生体リズムは約25時間であり、光を浴びることによって、体内時計の針が地球の自転の時刻に合わせられます。

活動の時間帯となる朝に光を浴びると、時計の針が1時間進み、自転周期と同じ24時間に修正されます。

休息の時間帯となる夜に光を浴びると、体内時計の針は1時間遅れることになります。

しかし、次の朝に光を浴びることで、やはり24時間のリズムに修正されます。

 

そして、この修正機能がうまく働かなくなると、体に不調が起こります。

 

体内時計の遅れと体の不調の関係

日が沈んで、あたりが暗くなったときに眠りにつくと、体内時計は1時間遅れ、ヒトの生体リズムである25時間に修正されます。

そして、日が昇り、明るくなるときに起床して光を浴びることで、私たちの体内時計は、1時間進められて、地球の自転周期と同じとなります。

つまり、昼行性の生活を送っていれば、体内時計のズレは毎日修正されることになります。

 

しかし、昼行性生物であるにもかかわらず、夜行性のような生活をしていると、体内時計のズレが修正されず、地球の自転リズムからかけ離れていきます。

私たちが眠りにつくはずの夜に光を浴び、活動を続けていると、体内時計の針は通常よりもさらに1時間遅れることになります。

つまり、地球の自転リズムよりも2時間遅れてしまいます。

 

そして、このような夜行性の生活を毎日繰り返していると、地球の自転周期と生体リズムがどんどんズレていき、時差ボケと同じ状態になります。

そのため、不眠、疲労感、便秘、集中力低下などの不調が現れてきます。

 

このような不健康な状態が長く続くと、次項で説明するような重大な病気を発症するリスクが高くなります。

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生体リズムの乱れと病気の関係

最近の研究から、生体リズムの乱れは、以下のような病気の原因になることが明らかにされています。

肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリック症候群、癌、心臓病、脳卒中、骨粗鬆症

 

そこで、上記の病気と生体リズムの乱れとの関係について説明しておきます。

 

メタボリック症候群

時計遺伝子に異常のあるマウスは、睡眠、覚醒のリズムや活動、摂食のリズムに異常が生じます。

また、同じ餌を食べていても、正常なマウスと比べて、血液中の中性脂肪、コレステロール、血糖の値が高くなることが分かっています。

そして、このようなマウスは、後に高血圧、脂質異常症、糖尿病が現れ、人間でいうところのメタボの状態になります。

 

時計遺伝子に異常のあるマウスは、食欲を抑制するホルモンや食欲を促すホルモンの濃度に異常が起こり、食欲の調節障害が起こります。

これが、マウスのメタボの原因だったのです。

つまり、体内時計は、睡眠や覚醒のリズムだけでなく、食欲のコントロールにも関係していることがわかります。

 

体内時計の乱れが、人間の食欲にどのように影響を及ぼすのか、そのメカニズムについては、まだ解明されていません。

ただし、人間においても、不規則な生活を続けていると、睡眠障害を起こし、食欲を抑制する働きのあるホルモンの分泌量が減り、食欲を増進するグレリンの分泌が増えることは分かっています。

そのため、体内時計の乱れが食欲の調節の異常につながると考えられています。

 

高血圧

高血圧の原因の一つとして、生活リズムの乱れがあります。

最近の研究から、「昼に高く、夜は低い。」という血圧の24時間周期のリズムも時計遺伝子が制御していることがわかりました。

血圧のリズムを超世知しているのは、主にB-mal1と、Clockという時計遺伝子だと考えられています。

 

ここで、B-mal1に異常があると、活動期および休息期の血圧がともに低くなり、低血圧になります。

そして、遺伝子操作によりB-mal1を除去したマウスは、血管を収縮させて血圧を上げる働きのあるアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンの濃度が著しく低下していったのです。

 

さらに、Clockに異常のあるマウスは、休息期の血圧が高くなることが原因で、血圧リズムの山と谷の差が少なくなっていました。

つまり、夜間に下がるはずの血圧が下がらなくなる夜間高血圧の状態だったのです。

 

また、最近の研究では、Cryという時計遺伝子の異常も、血圧の急上昇やサーカディアンリズムの消失を引き起こすとことが発見されています。

時計遺伝子Cryを除去したマウスは、アルドステロンが過剰に分泌されます。

アルドステロンは、血液中のナトリウムとカリウムのバランスを調整しています。

アルドステロンの分泌は、本来は夜に多く、昼に少なくなります。

 

しかし、時計遺伝子Cryに異常のあるマウスは、このリズムが失われ、アルドステロンの合成を促す物質が常に放出されている状態でした。

それにより、アルドステロンの分泌が過剰に増え、血液中のナトリウム濃度が上がり、高血圧を招いていました。

 

骨粗鬆症

体内時計が狂い、生体リズムが乱れると、骨の吸収と形成のバランスが狂い、骨粗鬆症や骨過形成が起こるとされています。

骨を溶かす働きには、副腎皮質ホルモンが関係しています。

通常、副腎皮質ホルモンの分泌は昼に増え、夜に減ります。

 

しかし、生体リズムが乱れると、夜間に減るはずの副腎皮質ホルモンが分泌され続け、骨を溶かす働きが促進されると考えられています。

 

夜勤と癌の関係

勤続年数が長い女性看護師には大腸癌や乳癌、シフトワーカーの男性には前立腺がんが多いことが知られています。

まず、シフトワークによる生体リズムの乱れは、時差ボケのような疲労をもたらし、それにともなって内蔵や血管を調整する自律神経や、ホルモンの分泌リズムに異常が起こります。

そして、体内時計の乱れは食欲の調節異常も引き起こすため、夜間の食事量が増えます。

このような状態が長く続くことが癌になる原因と考えられています。

 

また、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンは、体内時計に働きかけて、覚醒と睡眠を切り替える働きがあります。

メラトニンは癌細胞の増殖を抑える働きがあると言われており、夜勤のような不規則な生活によるメラトニンの分泌低下が、直接癌発生に関与しているとも考えられています。

 

以上から、夜勤のような不規則な生活により、体内時計が乱れ、不眠、疲労感、便秘、集中力低下など時差ボケのような症状が現れます。

また、自律神経の乱れ、ホルモン分泌の異常、食事量の増加、高血圧なども引き起こします。

そして、このような不健康な状態が続くと、肥満、高血糖、脂質異常などの症状が現れ、やがてメタボリック症候群や癌などにつながります。

メタボは、心臓病や脳卒中など命に関わる病気を発病する確率を高めます。

 

さらに、夜勤による体内時計の乱れは、不眠などの睡眠障害を引き起こし、そこからうつ病などの精神病を発症するリスクも高まります。

このように、夜勤は、体にも心にもダメージを与え、労働者の寿命を縮めることになります。

 

ちなみに、フランスのヴィスナール教授の調査から、夜勤をすると寿命が10年以上縮まると言われています。

夜勤者には、イライラ、不眠、胃病などの症状が現れ、次第に健康を害することで寿命を縮めるというのです。

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夜勤で寿命を縮めないための対処法

24時間働き続ける現代社会において、夜勤やシフトワークというシステムから逃れることは難しいです。

そして、このような勤務環境では、体内時計や生体リズムの乱れを回避することも困難です。

では、夜勤を余儀なくされる人が、できるだけ健康に生活するにはどうすればよいのでしょうか?

 

これには、他の時計機構を活用することが有効です。

私たちの体には、24時間周期のサーカディアンリズムのほかにも、いくつかのリズムが存在しています。

例えば、ウルトラディアンリズムと言われる90分、8時間、12時間といった短い周期のリズムや、7日間のインフラディアンリズムなどもあります。

シフトワークでは、サーカディアンリズムが乱れることは避けられないので、他のリズムで活動と休息のメリハリをつけ、体内時計の乱れを最小限に抑えることが大切です。

 

夜勤の看護師や、残業の多い会社員の活動周期には、3.5日のリズムが見られます。

そのため、シフトワーカーは、3.5日の間隔で生活リズムを整えるとよいと考えられます。

例えば、3~4日毎に休みを取る方法があります。

土曜出勤があり、日曜が休日なら、次は水曜か木曜に休むのです。

もしくは、水曜か木曜は残業をせずに早く帰宅し、十分な休息をとることも有効です。

 

また、仕事の際は、90分の周期を意識し、90分ごとに短い休憩をはさむと、仕事の効率がアップします。

 

まとめ

夜勤のような夜行性の生活は、体内時計を乱し、不眠、疲労、胃腸障害、自律神経の乱れ、ホルモン分泌の異常などの原因となります。

そして、生体リズムの乱れた生活が長く続くと、肥満、高血糖、高血圧などの症状が現れ、やがて糖尿病、癌、心臓病、脳卒中、骨粗鬆症などの重病を引き起こします。

また、体内時計の乱れにより生じる不眠は、うつ病などの精神病の引き金となります。

 

このように、夜勤は、肉体にも精神にもダメージを蓄積させ、寿命を縮める原因となります。

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